ハチ公 — 待つことを街に教えた犬

東京は速い街だ。
数分おきに電車が来て、人の流れは潮のように動き、世界のニュースが絶えず光る。

それでも渋谷駅の外、日本一忙しい交差点のそばに、**「待つこと」**の記念碑が立っている。

効率でもなく、
テクノロジーでもなく、
進歩でもない。

待つこと。

ハチ公口に立つ銅像は、この街で最も静かで強い場所のひとつだ。
ティーンエイジャーはここで初デートを待ち合わせ、友人は再会し、会社員は「ハチ前で」と言う。
これほど日常的に使われ、これほど深く感じられる記念碑は世界でも珍しい。


銅像の背景にある物語

1923年、秋田で一匹の子犬が生まれた。
東京に住む上野英三郎教授に引き取られ、教授は毎日渋谷駅から通勤していた。

毎朝、犬は駅まで送り、
毎夕、帰りを待った。

1925年5月、教授は勤務先で突然倒れ、そのまま帰らなかった。

それでもハチ公は来続けた。

約10年間、毎日午後になると、二度と降りてこない列車の乗客を待った。
通勤客は気づき、駅員は餌を与え、新聞は記事にした。
動き続ける都市・東京が、動かない一匹の犬に心を寄せた。

1935年、ハチ公が亡くなったとき、国中が悲しんだ。
銅像は死後ではなく、生きている間に建てられた。

彼は自分の除幕式に出席したのである。


実際に訪れてみて

私は最初、単なる写真スポットだと思っていた。
ラーメン屋と電車の合間に立ち寄る、有名なランドマークのひとつだと。

しかし、そこは社会的な儀式の場所だった。